ABMからAIへデータマネジメントが握るカギ

ABMは、ターゲットアカウント(企業)を定義した、戦略的なマーケティングです。B2B(企業間取引)の営業がこれまで行ってきた対企業向け戦略の一部をマーケティングが支援するマーケティング戦略の一つです。今回は、海外と日本のマーケティングの違い、海外と日本のマーケティングの潮流から、アカウントベースドマーケティング(以降、ABMという)と5年、10年先の真のAI時代を見据えたデータマネジメントの重要性についてコラムにしたいと思います。

ABMの到来

ABMは、2004年に米ITSMAが開拓した概念ですが、日本で注目を集めるようになったのは、2014年ころからマーケティング・オートメーションツール(以下、MAという)が到来したことにあります。日本は、戦後のモノを作れば売れる時代を経て、販売競争の時代に入りました。対面営業が比較的容易にできる国土面積と無時差、隣接国のない文化、言語や通貨、教育などの特徴から営業活動は、対面を主体としてビジネスを成長させてきました。しかし、日本のマーケティングは、海外と比較すると後れを取っています。その最大の要因は学問・教育の仕組みだと思います。

グローバル教育の仕組み

日本における経済・経営学や心理学は文系に分類されますが、米国ではサイエンス(Science)に該当します。米国の大学を卒業すると与えられる学位は、大きくBA(Bachelor of Art)とBS(Bachelor of Science)に分類されます。これを日本に当てはめると、BAは文系、BSは理系と理解されます。つまり米国におけるマーケティングは、サイエンスを軸とした経済・経営、心理、統計などからビジネスを追究するものなのです。日本のマーケターは、それを理解してポジションに就いているかというと疑問です。

例えば、国内のグローバル会社がマーケティングの人材を採用する時に、理系/文系のどちらを軸に採用しているでしょうか?このグローバル化されていない日本の教育の仕組みが、海外のマーケティングから遅れをとった最大の要因であると言えるでしょう。日本のマーケティングが海外に追い付き追い越していくには、教育の根本から変える必要がありますが、すぐに実現するのは難しい別の問題なのです。国土面積が広く、様々な国や文化に隣接する海外の国々は、この教育の違い、サイエンスをベースにマーケティング・ビジネス課題を乗り越える力があるのです。

マーケティングに求められるアートとサイエンス

2016年 Siriusdecisions Summitのタイトルは、“The Art & Science of Intelligent Growth”でした。私はこれを見て、日本のマーケターの何人がこの深いタイトルの意味を理解できるのだろうか?と考えると同時に、日本のマーケティングが海外からどんどん後れを取っていくことも考えさせられました。日本企業がアートとサイエンスでマーケティングを改善し、このボーダーレス(国境なき)の時代をどのように進むのか、、

テクノロジーの進歩に伴い、お客様の購買スタイルがデジタルシフトするにつれ、国内でも企業もビジネスおよび働き方をデジタルシフトするようになりました。早い企業は、独自にシステム開発して、個客インサイトをシステムで測る取り組みをしていた企業もありました。そんな最中、MAというツールが日本に到来し、ツールファーストのマーケティングが行われています。しかし、蓋を開けてみると、自社のビジネスに合わない、使いこなせない、効果が見えないなどの様々な問題に直面する企業が増えています。

これはツールの問題ではなく、日本のマーケティングの問題です。ツールを導入する前に自社のマーケティングとして、「やりたいことを明確に定義できなかった負の資産」なのです。「自社が行うべきマーケティングとは何か」きちんと定義して、戦略を立て、それを実現するためのツールの選定やカスタマイズが必要だったのです。「決められた材料から家を作る人はいない」のと同じで、戦略や設計に基づき進めるべきであったと気付き始めた企業も少なくないのです。

こうして、日本企業のマーケティングは、戦略を母体とする組織や体制の仕組みが整備される間もなく、MAというツールの到来によってその変化が求められ、これまで営業が培ってきたアカウントベースドセールス(以下、ABSという)のノウハウを上手にマーケティングに取り込めずに、結局のところサイロ化した状態で進もうとしています。本来あるべきマーケティングの姿は、戦略ファーストであり、経営層の理解と方針の表明であり、お客様企業のゴールに対し自社が単発ではなく、継続的にどう支援していくかを掲げ、それに必要な組織や仕組みを変えていくことなのです。

しかし、この海外技術が先行した国内のデジタルマーケティングの取り組みは、企業にとってマイナスではありません。Webのコンテンツを充実させ、営業の製品紹介やデモなどもWebが担うことで、営業の役割も購買プロセスの後工程に集中できるようになりつつあります。更に、お客様の情報をデータ化したり、Web上の行動を可視化することで、よりターゲットを絞ったマーケティングや営業活動が実現しつつあります。MAというマーケティングツールをきっかけに、マーケティング活動や組織が見直されはじめているのです。

日本のマーケティングが進む道

「教育の仕組み」という根本を変える働きはとても難しいため、ツールファーストで日本のマーケティングをボトムアップで改善する動きは、よい傾向だと思います。そして、米国でABMのブームが起き日本到来した今、この仕組みであれば日本に受け入れ易く、そこから逆に日本マーケティングを大きく進歩させるチャンスであると考えています。これまで営業部門が行っていたABSの役割の一部を、マーケティング部門が担うには、乗り越えないといけないハードルがいくつも存在します。対面(ノンデジタル)を主体とする営業と、非対面(デジタル)を主体とするマーケティングが歩み寄り、それぞれの協力の下、役割を定義し、お客様企業とコミュニケーションを取っていく必要があります。ABMをきちんとローカライズして取り組むことで、5年、10年先のマーケティングの資産になるベースを作れると考えています。

ABMの取り組みにより、国内のマーケティングも「リードナーチャリングからアカウントナーチャリング」、「リードスコアリングからアカウントスコアリング」、つまりは「リードマネジメントからアカウントマネジメント」にシフトして行くでしょう。B2Bの購買プロセスにおいて、1人だけを追っても見えない部分が存在するという現実問題などが浮彫となり、1企業から複数人の属性と活動をきちんと捉えることで、より確度の高い営業が喜ぶ案件を渡せることが徐々にわかってきたからです。これは、個(リード)を見ないことではなく、アカウントレベルで情報を集め、ニーズをキャッチする情報を増やし、ターゲットを見極めた機会創出を増やすことができるB2B(企業間取引)本来の姿なのです。

今後世界のマーケティングは、AIM(Artificial Intelligence Marketing)へと進むことは必至です。しかしながら、直近の日本企業は米国と同じ道を辿り、ABMに取り組み、アライメントつまり部門間の調整、マーケティング部門、営業部門、製品部門、システム部門など関連部門との調整を乗り越え、更に、マーケティング部門と営業部門の中間に組織や仕組み、また部門を横串で統括する仕組みを整え、より購買に繋がるビジネスの基盤作りに努力するでしょう。その中で当社がまず推奨するのは、先を見据えたデータマネジメントへの取り組みです。現在の機械学習、ディープラーニングは、投入したデータから何が知識(ナレッジ)かを見つけ出すものです。人の視点でデータを準備する必要があります。”Garbage In Garbage Out”という言葉が物語るように、もし投入するデータが使えないものであれば、AIから導き出されるものは使えないことになります。これからマーケティングなど特定分野のAIが次々に登場してくるでしょう。データマネジメントは、必要性が迫られてから直ぐに取り組めるものではありません。今からデータ活用を目的としたデータ蓄積(データ項目とデータの質)に取り組むべきではないでしょうか。

会社/製品

株式会社B-Storyは、デジタルマーケティングに取り組む企業を支援します。「実効性」と「実行性」をコンセプトに、戦略戦術ストーリーをデータ「蓄積、計測、可視化」の視点で一緒に作り上げていきます。

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